更地より安い? 採算の悪い賃貸マンション
投稿時間 : 2009年02月16日 18:15このブログでもお話してきましたが、土地オーナー様が賃貸経営をはじめる場合、私は「マンションよりアパート」をお勧めしてきました。その理由は、マンションよりアパートのほうが、建築費用をはじめさまざまなコストが少なくて済むからです。
私が問題処理にかかわった、こんな事例があります。
東京都下のある駅から徒歩で約20分の場所に、ご自宅と土地を所有されていた方がいらっしゃいました。最寄り駅は通勤・通学の乗降客も大変多い、活気のある駅です。
今から18年前、オーナーさんはご自宅横のその土地に、地元の建築会社の勧めで賃貸マンションを建てることにしたそうです。景気もよく、マンション建設が盛んだった頃のこと。いくらでも需要はあると予想されていたし、家賃も右肩上がりの時期です。たぶんそう迷いもなく建てたのではないでしょうか。
ところが、もともと駅まで徒歩20分というアクセスの悪さに加えて景気が悪化、建築後数年で当初の見込みが崩れてしまいます。建物の老朽化も伴って、空室問題に悩まされるようになりました。
そこで、オーナーさんは今から7年前にとうとう賃貸経営をあきらめ、自宅も含めてマンションの売却を考えます。ところが、木造の自宅はすんなり売却できましたが、マンションは簡単に売れません。
そして驚くべきことに、不動産業者が算定した売却価格が更地価格を大幅に下回る事態に陥ってしまったのです。つまり、建物(マンション)の価値はゼロどころか、マイナス査定になってしまったということです。
これは、なぜでしょうか。
経営状態の悪いこのマンションは取り壊すしかない。ところが、マンションの解体には多額の費用がかかる。さらに当時、半分の貸室には入居者がおり、立ち退いてもらうには費用と時間がかかる・・・これが土地の価格より大幅に低い価格に算定される原因でした。自宅だけあっさり売却できたのは、木造建築だったからです。
マンションはアパートに比べ、解体時にも多額の費用がかかります。この事例では、郊外の駅から徒歩で20分かかる場所なのに、高めの家賃設定をしてしまったことも破綻の要因といえます。これも建築費用が多額だったために、そう設定せざるをえなかったのでしょう。
もちろん、土地の特性によっては、必ずしもアパート建築が向いているというわけではありません。アパート以外の活用方法を選択するべき場合もあると思います。
『賃貸マンションを建てる』ことは、それだけ高いリスクを背負うことになります。とくに昨今では、景気がいつどうなるかは全くわからないのです。計画を進める前に、慎重に考えることが重要だと思います。